其は歴史となり、灰燼となり、無に帰す

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枯れない世界と終わる花(SWEET&TEA) 感想

本作の購入動機はパッケージ裏に書いてあったあらすじを見たことですね。

ハルに抱かれた小さな女の子が花になる瞬間を目撃してしまう。

え、花になるってどういうことすかそれ(笑)?

「こんな世界で、わたしはこうやって生き永らえて来たの。
でもわたしはまだ生きていたい。他人の命を引き換えにしてでも」

何か重たい話系ですねーと察せられました。そして最後の主人公っぽい人物の

「-それでも俺は、こんな世界の終わりを願うよ」

という語りで締められているあらすじでございました。
「こんな世界」というのがハルと主人公っぽい人物共通の台詞ですので、主人公っぽい人物の方は
『他人の命を引き換えにするという事が前提の世界を改変してハルを助ける』とも取れますし、
文字通り(ハルを含めて)世界を終わらせるとも取れますね。その辺りは本編を楽しんでねということで、
色々想像を掻き立ててくれます。こういうのが嫌いな人はもう買わないでしょうけど(笑)

システムなどについて

選択肢が3つだけのADVです(笑)ヒロインが4人なので分岐の為だけの選択肢ですな。
なので難易度は低いというか難易度に言及する意味はないですね(笑)

回想は完備しています。CGモード・シーン回想・BGM鑑賞・ムービー鑑賞ありです。
ところでSD絵の手がヒトデみたいと思ったのは私だけでしょうか(笑)?

クイックセーブ機能は存在していますが、ロード画面にクイックセーブのスロットが存在しないため、
タイトル画面からロードすることができませんのでやや不便。

シナリオについて

フルプライスでない売価設定(税別6,800円)のせいか、ちょっとシナリオが短いですね。
攻略可能ヒロインは4人(内1人はオマケ扱いっぽいですが)いるのですが、
シナリオの分岐は最後のエピローグの部分だけで後は一本道です。
2回目以降を既読シーンスキップするとほんとにすぐ終わっちゃいます。
本編にはこれ以上お話を追加しても蛇足になると思いますが、
オマケモードでエクストラシナリオ的なものを増やしても良かったかも。

さてお話としては泣きゲー的な部類に入るでしょうか。
花になる人々とヒロイン達が仲良かったりするという設定を鑑みれば、
ヒロイン達が汚物は消毒だ的なノリでなければ(笑)悲劇的な要素しかないのは想像に難くありませんね。
しかしそういった場面ばかりではなく日常シーンでは意外とコミカルなノリのシーンもありますので、
そこまで全体的に暗い雰囲気ではないです。その辺りのバランスは秀逸と言えるのではないでしょうか。

ストーリーの流れは一本道となっており、コトセ(長女)→ユキナ(三女)→ハル(次女)の順番で話は進んでいきます。

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姉妹はそれぞれゲーム内の「世界」において「世界」を維持するための「エネルギー」を供給する媒介としての
役割を担っています。「エネルギー」とは人々を「世界」と融合させることにより「世界」に供給されるというもの。
人々が融合すると副産物として花が出現するようで、それが「人が花になる」ということを示しているようです。

物語終盤でこの「世界」の「神」によると、「世界」に生きる人々は運命によって寿命が定められているとのことで、
花にされる人々には天啓のようなものが降りてきて、自分の運命を悟るのだそうです。
因みに病気によって亡くなるというような場合も運命によるらしいのですがそうであるならば、
今際の際の人を世界に融合させたらいいんじゃね?
宗教的な観点から見れば死とは此岸から彼岸へ魂が行く(導かれる?)ことという概念が良く説かれていますから、
いきなり天啓を降ろして神隠しのように人を消し去るよりはそっちの方が自然じゃないかなあ…
と、ゲーム内の神の世界設計に文句をつけてみる(笑)

この設定のあたりで2つ疑問があります。
まず1点目は神によると、「世界」を維持するためのエネルギー供給の
媒介者(ゲーム内では「天使」と呼称、以下天使と記載)は「理の外にある者」とのこと。
天使の力は人に負担をかけるらしく、天使となった者はいずれは灰になって亡くなることとなります。
「世界」を維持するために天使の存在は不可欠な為、天使が亡くなれば次に誰かが天使になりますが、
それは運命なのでしょうか?
神の言明を読む限り理と運命は同じ意味として扱われていますから、天使でない人が天使になるということは
運命の内にあった人が運命の外に置かれるということを意味します。
運命の外に出ていくことが運命って何かヘンですよね?
後は例えば最愛の恋人を花にされた人が世を儚んで自殺したらそれも運命なの?など、
色々ツッコミどころが出てくる運命とは何なのかというのが1点。
もう1点は花にされた人々が時々その運命について怨嗟の声を挙げることがあるという姉妹の語りや、
花にされた人々の残留思念的なものが実際に怨嗟の声を挙げているシーンも出てきますが、
別の登場人物の語りとして

(世界に融合するという天啓を受けて)
主人公「だったら、逆らおうとは思わないのか?」
登場人物「思えないわ」
登場人物「朝には太陽が昇って、夜には沈む。朝にはまた昇る……」
登場人物「そんな、疑問にも思えないような感覚なの」

疑問にも思わないのに怨嗟の声を挙げるんかーい(笑) という点ですね(笑)

設定のディテールについては色々疑問に思う所はあるものの、物語の構成については良くできていると思います。
序盤では様々な設定について情報が詳らかになっていないのでプレイヤー置いてけぼり感が酷いですが、
物語が進んでいくにつれ小出しにされていく伏線を終盤でどんどんと回収していく様はお見事。
序盤でちりばめられたネタは、後半を読み進めている時はほぼ覚えてないと思いますので、
何度かリプレイすることをオススメしておきます。
例えば最初の街に着いた時のやり取りにおいて名前で言葉遊びする時にレンが「アキちゃん」と言うのは
名前なんてどうでもいいという態度の主人公に対するあてこすりなだけではないのに気付いたりできます。
でもレン、お前が言うなと思うのは私だけではありますまい(笑)

このように構成についてはほぼ不満はないのですが、姉妹のエピソードシナリオで
とってつけたように2回Hシーンを入れるのはやめれ(笑)

シナリオの中身も良くできていると思います。
出会って数日という認識の姉妹が(選択肢によっては)いきなりセックスしてしまう唐突さはあるものの、
次女シナリオでの「ショウ」と次女の確執と真実の流れなどをはじめとして、
随所で泣かせるシナリオになっていると思います。

まとめ

泣かせるシナリオを素直に楽しめるか、恣意的な設定による誘導として見るかで
このゲームの評価が分かれるでしょう。
個人的には普段そういう恣意的さが鼻につく方ですがなかなか楽しめたと思います。
こういったゲームの経験値の低さ故か、このゲーム自体の巧さ故かは分かりませんが。

蛇足

プレイ時に星新一氏のショート・ショート「生活維持省」を思い出しました。