其は歴史となり、灰燼となり、無に帰す

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21-TwoOne-(Basil) 旧レビュー

※本レビューは過去サイトからの転載です

店頭で何気なく購入。

システム

ちょっと重いですね。バックログあり。音声なし。標準以上の仕様です。
ただ特定の機種や状況でフリーズする場合があります。
ウチの環境ではOSの起動ディスクを使用する事態に…マジでビビリました。

BGM

プロの仕事ですね。音質もいいし。OPムービーの曲とかは凄く盛り上がりますな。
ただシリアスな場面とスラップスティックな場面とで同じ曲を使うのはご勘弁。

ストーリー

救えない命があるという現実に打ちひしがれる主人公に、
不老不死を与える「人魚の肉」という存在を絡めた物語。それにプラスして殺人事件が起こります。

プレイしてみて…

続きを読む このゲームの特徴はフローチャートと人物信頼システムなるものです。
フローチャートはそのまんまでゲームの分岐点とかを流れ図で示したものです。
人物信頼システム(このシステム自体には名前はありません。便宜的に私が付けただけです)とは
プレイヤーが「主人公の(主人公以外の)登場人物に対する信頼」というのを「疑惑、平常、信頼」の三段階で
いつでもどこでも変更できる、というものです。フローチャートは使いにくいです。あったら便利っていう程度。
人物信頼システムもどうも上手く扱いきれていない気がしますね。
パッケージ裏には「…変更することにより多彩に変化するストーリー」とありますが、
そこまで言うべきモノでしょうかね?確かにヒロインの攻略には結構影響してますけど、
事件を防げるわけでもないので、大筋の流れは変わりません。同じ話を違う人から聞けたり、
主人公の受け答えが変わったりする程度ですね。それだけでも結構楽しめましたけれども、
このシステムが攻略のどこに影響するかが分からない内は楽しむどころじゃないですよね。
しかもこのゲーム、ヒロインを攻略する順番が決まっているため、
下手するとずっとバッドエンドっていう人もいるかも…順番だけならともかく、
これに人物信頼システムが関わってくるわけですから、何が原因で詰まってるのかすらも分からないという
袋小路に陥る可能性がかなり高いと思われます。しかもフローチャートも分かり難いし。
根本的なところを突っ込ませて頂くとまだ会ってもいないキャラに対しても
信頼度が変更できるってのはまずくないですか?
まあそれがシナリオにはあんまり影響しないということの隠れたメッセージかもしれませんが(笑)。

シナリオについて。

推理物ではありませんね。というか主人公は唯の医師ですがな。登場人物は殆どが嘘吐きまくってます。困ったもんだ。
犯人なんてわかるワケありません。確信できる材料がなにもないんだもん。誰でも犯人になり得る設定ですね。
総合的な評価はちょっと難しいですね。個人的にはキャラがとても良いのと製作者の熱意が感じられる
テキスト量(信頼度によって結構表現が変わります)、CG、システム(何度かフリーズさせられましたがね)には
好感度大なんですが、客観的に見るとミスが多いのとテーマに対してやや中途半端なシナリオがあるのとで
ちょっと(かなり?)残念な出来と言わざるを得ません。私も言いたくはないんですけどね。

まず前者のミスの多さについて。ネチネチと色々と挙げてみましょう(悪趣味…)。
美魚・真魚シナリオ以外においての美魚手術前の会話。「人が何の為に生きるかについて覚えているかい?」
話してもいないことを覚えることは不可能です。まあこれはミスというよりプレイヤーは仕様上
美魚・真魚シナリオクリア済みで知ってるからいいやという判断だと思うんですが、
このゲーム上この手法はまずいんじゃないでしょうか?

キャラクターの苗字がおかしい。ここは伏字で。

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一之瀬 木葉の旧姓が「汽京 木葉」ならば汽京 紅葉の旧姓も当然「汽京 紅葉」のままのはず。
ですが5日目の木葉との語りでは「一之瀬 紅葉」なる名前が登場します。どっちやねん。


6日目原崎刑事の発言が謎。一応伏字。
伏字を開く

「院長が狙われることは予想していたんでな、見張りをつけていたんだがまかれたらしい」

誰が刑事をまいたのかハッキリ書いてはいませんが院長室で院長が死んでいたという事実を考えると、
誰(院長or犯人)が刑事をまいたとしても不自然な気がします。


他にも色々ありますが割愛。にしてもこういうミスをされるとどうにも萎えます。
枝葉末節に気を取られて根元がぐらついてます。これはまずいですね。
次に後者の中途半端なシナリオについて。伏字で。
伏字を開く

まず立木医師に人魚の肉の存在を教えたのは「汽京 紅葉」医師という事になっています。
自分達(院長、富田、立木)が殺した人間の娘から人魚の存在を吹き込まれて、
(紅葉の苗字から立木氏は彼女は楓医師の関係者だと推量できたはず)殺人事件の実行犯グループ内で
仲間割れの脅迫をするというのは明らかにおかしいですね。普通、「何か裏があるんじゃないだろうか?」と
考えますよね?立木医師が紅葉を信頼していたならそれもありだったのかもしれませんが、
身上調査書の存在から察するに彼はあまり紅葉を信頼していなかったようですし。
っていうかどんな風に吹き込んだら立木医師はこう動くの?
次、美魚の病気について。半年間「検査を呆れるほど繰り返して」原因が分からん病気にかかっている人間に対して
「じゃあ、生きようか」という台詞を美魚に言える強靭な神経は主人公には持ちえないんじゃないか?と思えます。
仮に手術に失敗して死んだとなったら本当に屋上から飛び降りてそうです。
逆に言うなれば「じゃあ、生きようか」と言う主人公の言葉に対して、「絶対に助けるんだ、医者として。」と言う
主人公の決意より「絶対に助かるんだ、ゲームとして。」と言う予定調和が見え隠れしそう。
いや、そう言う場面で人が助からないゲームの方がいいんだ、とは言いませんが、
劇中見せる主人公の弱気な部分とのギャップがちょっと気になるんで…このシーンだけはめちゃ強気(笑)。

次、美魚の手術イベントについて。美魚・真魚・芹の3つのシナリオ以外では要りません。
少なくとも医師として主人公の逡巡は要りません。紅葉・木葉・香澄シナリオのテーマとは関係ありませんので。
香澄は全く必要ありません。彼女に課せられた役割はスケープゴートのみ。紅葉を実行犯にしたくないだけ。
それだけじゃないんでしょうか?彼女のギャグも彼女のシナリオをやった後だとちょっと笑えませんし、
エンディングもなんじゃそりゃってな感じのなし崩し的なものでしたし。

木葉シナリオも不老不死の概念が移ろい気味。

「不老不死なんてまやかしです」
「永遠に生き続けられる生物なんてこの世には存在しません」

と、言ったにも関わらず

「終わりがあるのは幸せな事ですよ…」
(地の文)1人の女性が永遠を手に入れ…(以下略)

…どっちですか?

あと紅葉が何故復讐を実行したのか、と言うことについて納得できる説明がなされていないです。
「化け物だから」…そうすか?ワケわからんです。「木葉や私の13年が報われないじゃない」…そう…か?
そんな良く分からん理由で紅葉は医師として最もやってはいけない行為に手を染めるわけですか?

とまあ、こんな感じでかなり文句のつけどころが多いゲームなんですが…憎めないゲームなんですよねぇ。
何度OSを止めてくれたか数え切れないぐらいやってくれた凶悪なシステムなのに…憎めないゲームなんですよねぇ。
やっぱキャラが良いです。このゲームの魅力はそこにあります。ということはキャラゲー

まとめ。

この綿密な雰囲気の作り込みは圧巻。シナリオの中身についての整合性、合理性を追及すれば、
テーマ重視っぽいにも関わらず「キャラゲー」「雰囲気を楽しむゲーム」という評価を回避することが出来るかと。
頑張って下さい。